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図書館司書と専門性

 はじめに

この記事は、klis Advent Calenderに寄稿しています。アドベントカレンダーなのにだいぶ遅刻してしまいました。申し訳ありません。

 

 アドベントカレンダーということで軽く自己紹介をすると、仏語学を専攻しながら司書の資格を取りたくて春日に通っている人です。

そういうわけでklisのアドカレに「図書館司書と専門性」というタイトルでお邪魔させていただいております。klisの人じゃなくて本当に場違い感が漂っていますが、最近春日エリアにいる方が多いから名誉学類生ってことで許してほしい。
そして内容についてもあくまでも学生が適当に書いてると思って見て欲しい。

それでは本題に参りましょう。

 

そもそもなぜ図書館司書を志望しているのにほかの学類に入ったのか

まずは一番よく聞かれる質問からはじめたいと思います。

少し昔に遡って自分のことを話すと、私は高校2年生に上がる時に文理の選択で迷っていました。理系科目が苦手なわけではなかったし、むしろ社会科の科目に苦手意識を持っていたにも関わらず理系分野の研究にはまるで興味を持てなかったからです。そこで社会人としてお金を稼ぐのに自分の得意を活かせそうな仕事、やりたい仕事として司書という職業を見つけました。

高校生の私は、ぼんやりと図書館で働きたいとしか考えていなかったのですが、「図書館司書」「司書教諭」という資格があることまで調べ、大学で単位を取ることもしくは講座を受講して終了証明をもらうことが必要であるとわかりました。

 

そこで私は、とりあえず父に相談をしてみました(父は頭がいいのです)。

私「図書館で働きたい(超ざっくり)と思ってるんだけどどうかな?」

すると父からは次のようなアドバイスを受けました。

父「書籍の電子化は必ず進むと思う。図書館の業務も機械化が進んで、職が消えないまでも需要が増えるような職業ではない。そう考えた時に、自分の専門とする学問を持っていてその専門分野の本が案内できるような司書になった方がニーズはあると思うよ。」

父「図書館司書になりたい人は文系が多いから、理系分野の専門を持っていたらより有利になれると思うよ。」

 

高校生の私はなるほど、と思いました。そこから考えた結果、理系分野の方がまあ有利には違いないとは思いましたがやっぱり大学4年間勉強し続けられるとは思えず、結局文系に進むことになります。そして志望校に選んだのが「他の学類の授業を自由に取ることができて、図書館を専門にしている学類がある国立大学」であるところの筑波大学だったわけです(本当はもう少し紆余曲折ありましたがそこは省きます)。

 

結論的には父が言っていたように司書の雇用問題は未だ解決の糸口が見えず、雇用人数も減っているので就職自体の難易度も高めでかつ給料もよくないと言う二重苦状態が続いています。

それでは、知識情報・図書館学類で図書館情報学を専攻することは司書として働く上で意味がないことなのでしょうか。
そんなはずはありません。

 

職と専門性

図書館司書は専門職であると聞くことがあります。
この場合の専門職ってどういうことでしょう。

 

医者が専門職であることを疑う人は少なそうです。彼らは大学で学んで医師免許を取得し、高度な専門知識を持っています。弁護士や建築士、看護師さんなんかも該当するでしょう。

では、鳶職の方々はどうでしょう。職人さんと呼ばれる人々は、専門職と呼んでいいような気がします。が、なぜかお医者さんよりは専門職と言う言葉に対する許容度が低い気がします。

 

Wikipediaさんによると、専門職とは「専門性を必要とする職のことである。現代の日本においては、国家資格を必要とする職業を指すことが多いが、近年では高度な専門知識が必要となる仕事については、国家資格を不要とする仕事でも専門職と呼称することも多い。」(1)とされています。

Wikiさんの信用度については一旦置いておいて、それらしいことが書かれています。

つまり医者は国家資格を必要とする職業、職人は高度な専門知識を必要とする職業であるので専門職と呼ばれると考えられます。

 

国家資格を必要とする職業については、試験を受け、合格することでその知識を持っていることを証明しています。
一方で高度な専門知識を必要とするが資格がない場合、大抵は職歴の長さが証明となるような気がします。

 

実際には、専門職と呼ばれる職業は、大抵が資格(知識)と職歴(経験)の2つの面を併せ持っているでしょう。

医者といえど新人を専門家と呼ぶのはなんだか気が引けますし、専門書を読み漁っただけの人は職人とは呼べませんからね。

 

図書館司書と専門性

では図書館司書はどうでしょう。

図書館司書は資格があります。国家試験のようなものはありませんが、法で定められた基準をもって正式な資格とされています。

また、職歴も重要でしょう。レファレンスの勉強をしたからと言って実践でいきなり使えるとは到底思えませんし、大抵の職に言えることですがやってみなければ分からないことはたくさんあります。

 

司書が医師や弁護士などと違うことは、法で定められてはいるものの図書館への必置が義務付けられているわけではなく、資格を持たない人が働いているケースが少なくないことです。

また、職歴とスキルがあっても事務として採用されているため給料が上がらなかったり、図書館での地位・社会的地位が高い職業ではないことも挙げられます。

 

理想を言えば、図書館司書という資格をもっと厳格な国家資格にしてほしいし、医師や弁護士と同レベルの専門職にしたいし、その認識を広めたいです。

図書館情報学を学んだ人が司書として成功する世の中であるべきだと思います。

 

同様に、専門を学んだ上で図書館司書として働き、双方である一定の結果を出している人も認められるべきだと思うし、磨いていくスキルや働く場所によって双方の人材が求められていると思います。

(例えば大学図書館にはその大学の専門分野を扱える司書がいたら良いと思うし、市立図書館レベルだったら蔵書構成やレファレンスについてしっかり学んだ司書がいたらいいと思うってことですね。学校図書館には教育学を学んで司書の資格も持っているような人がいたら最高だと思うし、国立国会図書館にはそれぞれの専門で修士を出てかつ図書館についても学んでいるような高度な人材がいたらいいと思っています。)

 

しかし、現実は司書資格の有用性はあまり感じられないし、司書になっても食べていくのが厳しい人も多いです。

 

大学で専攻したからできること、ほかの専門を持っているからできること

私は、「大学で専攻する」と言うことははいくら他の分野の人が勉強し知識を得ていても違った意味があると思っています。

履歴書を書くときにも、学士の文言も、何をするにも付いて回るのが大学での専門です。一度は覚悟を持って向き合う時があると思うし、向き合ったと言う証拠が残ります。

klisの方々は、たとえ図書館に関連した研究をしなくても、卒業すれば図書館情報学を学んでいた証拠が残りますし逆に言えば他の勉強をしたことは書類として残るわけではないでしょう。
私のように他の学類から司書資格を取った人は、もちろん司書資格を取得したことは残りますが、本気で学んでいたかどうかは書類には残りません。

 

さらに希少価値で言えば、「理系学問を専攻していて図書館司書になった人」と「図書館情報学を専攻していて司書になった人」はそれほど変わらないような気がします。
それどころか現状日本では「文系の学問を専攻していて図書館司書になった人」が一番多いような気がします。

私は希少価値を求めてきたつもりが、一番凡庸な人材になってしまいました。なんとなく途中から分かっていたけど。

それでも、大学で仏語学を学んできたからできることもあると思っていますし、あと1年はしっかり仏語学に向き合って卒業するつもりです。

 

 

世の中には「ひとつのことを極める事が得意な人」と「複数を同時に勉強する事が得意な人」がいると思います。

私は、ひとつのことを極めるのは苦手です。

でも、ふたつ、みっつと多くのことを「それなり」で良いから学んでいければそれは他の人とは違うオリジナルな強みに出来ると思っています。

 

幸いなことに、理想とはかけ離れた現状のおかげで私はいろいろなことを学びながら、自分が得意な方法で図書館司書を目指す事が出来るというわけであります。

なんだかまとまらない文章になってしまったけど、図書館司書と専門性って今は専門性だけを求めていくにはリスクが高いなと思います。
それだけに、klisでしっかり図書館の研究して図書館で働く事になったみんなを尊敬しているし、頑張って欲しいと思います。

 

終わりに

終わりに、いつか近い将来図書館司書の地位が上がって、給料も上がって、胸を張って専門職と言える日が来ることを祈って。

 またね。

 


“専門職”. Wikipedia. 2019-10-26. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%82%E9%96%80%E8%81%B7, (参照 2019-12-23).